育成キャンセル界隈を生まない仕組み。
Column
2026.9.30

「パワハラと言われてしまう」
「注意したら辞めちゃうから、黙っておこう」
そんな理由から、部下や後輩の育成に関わろうとしない「育成キャンセル界隈」が、話題になっています。
しかし、これは管理職だけの問題ではありません。
採用した人材を、誰が、どのように育てるのか。会社として準備できているかどうかが問われています。
採用には予算がある。でも、育成の時間はあるか
求人広告に費用をかける。SNSやショート動画で会社の魅力を伝える。合同説明会でプレゼンをする。
そこまで力を入れて採用した人を、入社した途端に「現場で覚えて」と任せていないでしょうか。
採用には予算を確保しているのに、育成には時間も担当者も決まっていない。
これでは、教える側も教わる側も苦しくなります。
「新人を育てておいて」と言われても、担当者の仕事量が変わらなければ、育成は単なる追加業務です。
教えている間、自分の仕事は止まります。新人の確認や修正をすれば、さらに時間がかかります。それでも本来の仕事が遅れれば、担当者が注意される。
この状態で、「もっと部下に向き合って」と求めるのは、少し都合がよすぎるかもしれません。
育成を任せるなら、何の仕事を減らすのか。教える時間をいつ確保するのか。困ったとき、誰に相談できるのか。
経営者が決めるべきなのは、育成担当者の名前だけではありません。
何も言わないことが、優しさとは限らない
一方で、忙しさやハラスメントへの不安を理由に、必要な指導まで避けてはいけません。
間違いを指摘されないままでは、本人は何を直せばよいのか分かりません。
そして評価の場で突然、「期待に届いていない」と言われれば、本人は納得できないでしょう。
大切なのは、「人には優しく、基準は厳しく」という姿勢です。
たとえば、提出が遅れた部下に対して、「やる気があるのか」と責める必要はありません。
「締め切りは昨日の17時でした。何があって遅れましたか。間に合わないと分かった時点で、相談してください」
このように、人格ではなく事実を確認し、次に求める行動を伝えます。
相手を傷つけない。しかし、必要なことは曖昧にしない。
この伝え方は、管理職研修やOJT研修で身につけることができます。
中小企業こそ、育成の約束を具体的にする
大きな研修制度をつくる前に、まずは次のことを決めてみてください。
・最初の1か月で、何ができればよいのか
・誰が教え、不在のときは誰に聞けばよいのか
・いつ、できたことと困っていることを確認するのか
・仕事で迷ったとき、どこまで自分で判断してよいのか
「分からなかったら聞いて」は、本人に判断を任せすぎる場合があります。
毎日の終わりに10分だけ確認する。週に一度、任せる仕事の範囲を見直す。できたことを具体的に伝える。
こうした小さな約束が、育成と定着につながります。
育成担当者にも、相談相手が必要です。教え方に悩んだとき、一人で抱え込ませないことも会社の役割です。
育て方は、採用活動でも伝えられる
採用活動で「成長できる会社です」と伝えるなら、その中身まで示す必要があります。
インターンシップで仕事の振り返りを行う。会社説明会で、入社後に任せる仕事と支援の流れを説明する。採用SNSやショート動画で、先輩が後輩を教えている日常を紹介する。
見栄えのよい言葉よりも、「入社した自分が、どのように働き、どのように成長するのか」が分かる情報のほうが、学生には伝わります。
採用と育成、定着は別々の取り組みではありません。
人を迎える準備と、人を育てる準備は、ひと続きです。
「育成キャンセル界隈」という言葉を、単なる流行語で終わらせてはいけません。
自社では、採用した人を育てる時間と仕組みを、本当に用意できているでしょうか。
人事の扉株式会社では、採用から定着までを見据えた採用セミナー、管理職研修、OJT研修、1on1研修を行っています。
自治体・商工会議所・商工会・各種団体での講演や研修についても、ご相談ください。